コラム  2022.10.06

日本の長期停滞は老害のせい?

林 文夫

下の二つの散布図を見ていただきたい。対象国は、OECD加盟国(1973年時点、トルコを除く)とAsian Tigers(韓国、台湾、香港、シンガポール)と中国とインド。横軸の「老人比率」とは、生産年齢を20歳から69歳として、

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の期中平均。去る7月に発表された国連の人口推計から計算した。縦軸の一人当たりGDP成長率は、PWTPenn World Table, 成長率の国際比較の定番データ)による。

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1からわかるように、1960年から1990年までの30年間は、Asian Tigersや日本の人口構成は若く成長率も高かった。図の左上に位置するこれらの国々から右下のイギリスにかけて、多数の国が右下がりの傾向線の近傍に並んでいる。すなわち、老人比率と一人当たりGDP成長率の間には負の関係がある。これを「老害」と呼ぼう。(アメリカやカナダなど、第2次大戦非戦場国はこの線の下にあるが、それは1960年のGDPに戦禍の悪影響がないせいだ。)

図2_9_12_page-0001.jpg

2から一目瞭然だが、1990年以降、日本は老人比率が急上昇し、老害により成長が大幅に低下した。このような急速な高齢化が1990年よりかなり前から進行していた出生率の低下によることは、衆目一致だろう。(なお、図2の中国の成長率は世銀やIMFによると8%を超えるが、PWTでは学会の研究を反映して5.8%。)

この出生率から成長への因果関係を用いて成長率の長期予測をしてみよう。

国連の人口推計によると、2020年からの30年間で、低出生率の結果、日・韓・台・中の人口は減少し老人比率は40%を超える(日本は45%)。これに対し、アメリカは移民の効果もあり、人口は増加(年率0.4%)、老人比率は37%にとどまる。

老人比率40%越えの日・韓・台・中の一人当たりGDPは老害により停滞し、GDP(一人当たりGDPと人口の積)は減少する。老人比率37%のアメリカの一人当たりGDPは、図2から判断すると年率1%弱で成長する。これに0.4%の人口増加を加えたものがアメリカのGDPの成長率となる。

人口減少の衝撃は老害によって増幅される。これは日本ばかりでなく,イタリアやギリシャのような高齢国でも起こっている。


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