Media International Exchange 2026.08.24
Pulling Out of China Could Help Chinese Companies Catch Up - The Economic Security Trap Japanese Executives Fear
JBpress on Aug 21, 2026
| In light of recent improvements in the translation capabilities of generative AI, we will discontinue the distribution of English translations. Please translate the text into English as needed when reading it. |
7月後半、四半期に一度の定例出張で中国に2週間滞在した。そこで日本企業の中国ビジネスの業績好転をもたらし始めた新たな変化に着目した。
筆者が現地でヒアリングした範囲では、日本企業の対中投資姿勢は2025年を底に、2026年に入って積極化の兆しを見せ始めていることは本年1月の中国出張の際に確認できていた(注)。
業況や中国市場に対する見方の改善は、日本企業のみならず、米国や欧州の企業でも同様の傾向が見られている。
それは中国米国商会の「中国ビジネス環境調査」(2026年1月公表)と中国EU商会の「中国ビジネス信頼度調査」(2026年5月公表)でも示されている。
今回の中国出張では、さらにもう一歩進んで、中国のハイテク企業と取引関係がある一部の日本企業の業績が急拡大しているという事例をいくつも耳にした。
個別企業の社名は公表できないが、製品分野としては次のような事例である。
あるコンデンサー製造企業では昨年まで中国企業との競合が激しく、販売価格の引き下げを余儀なくされ、業績が厳しかった。
しかし、最近になって中国企業からの受注が急増して生産能力が追いつかない状況となり、販売価格も上昇、業績が好転しているそうだ。
別の電源供給メーカーでは、AI(人工知能)向けデータセンター関連の中国企業の要求レベルが高度化し、電源の安定確保のために極めて高い信頼性が求められるようになったため、世界の主要企業で採用されている同社製品への発注が急増しているという。
さらには、電力確保のための長距離高圧送電やデータセンター内の大容量通信のための光通信などに関連する日本企業などの業績も急拡大しているそうである。
こうした企業では生産能力を増強するために生産ラインの増設、さらには新工場の建設など、積極的な投資姿勢が目立っている。
一方で、中国市場の変化は日本企業より速く、この需要拡大がいつまで続くのかを見極めるのが難しいという悩みを抱える企業も少なくない。
増産投資の場合、必要とされる投資額も大きいため、最終判断のため日本本社の社長が自ら中国現地を訪問するケースも増えつつあると金融関係者が語ってくれた。
(注)キヤノングローバル戦略研究所ホームページ筆者コラム26.2.26掲載「マクロ経済は停滞持続、成長率は緩やかな低下傾向持続 ~日本企業の対中投資姿勢は昨年をボトムに積極化の方向~」p.12~13を参照。
このように技術レベルと製品の信頼性がともに高い日本企業に対する中国企業からの注文が急増した要因は、中国企業の急速な技術進歩にある。その象徴的な存在がAI関連産業である。
約2年前まで、中国のトップAIモデルは米国のトップモデルに大きく後れを取っていたが、最近ではその性能差は急速に縮小し、ほぼ肩を並べる水準にまで追いついてきたと言われている。
しかも中国のAIは設計、計算資源の使い方、中国国内市場での競争激化等の要因によって、ほぼ同等性能の米国のAIに比べて利用料が安いため、最近では、米国の開発者や企業の間でも中国製AIを採用・併用する事例が目立つようになっている。
このようなAI技術の高度化と需要急増を背景に中国企業も世界の一流企業との厳しい競争において、小さなミスや不具合も許されない状況に立たされている。
その結果、中国企業が世界の一流企業から信頼されている日本企業の技術力に頼らざるを得なくなっている。
AI関連産業のすそ野は広く、データセンター、それを支える電力供給、半導体、電子部品、人型ロボット等に至るまで、様々な産業分野に及ぶ。
このため、これらの産業の発展の恩恵を受ける日本企業がどんどん増えつつあるのが最近の新たな変化である。
中国のマクロ経済全体は不動産市場の長期停滞に加え、モノの消費の停滞、従来型産業の伸び悩み、「内巻き」と呼ばれる過当競争や過剰生産など多くの問題に直面しているため、今後も数年間は緩やかな成長率低下傾向が続くと見られている。
しかし、その一方で高い技術力を備えた民間企業を中心とするハイテク産業の拡大は今後数年間、あるいはそれ以上持続すると予想されている。
この分野で必要とされる世界最高水準の技術力と信頼性を保持し続けることができる日本企業は、中国のハイテク産業の発展とともに大きく業績を伸ばす可能性がある。
以上のように、高い競争力をもつ日本企業の中国ビジネスの業績好転が進む一方、今回の出張中に数人の日本企業関係者から日本政府の経済安全保障政策強化に関する懸念について相談を受けた。
その主な論点は、次のようなものである。
日本企業が中国のハイテク産業分野において販売を拡大すると、いずれその技術が中国企業に流出し、日本企業の技術が奪われ、日本企業の市場シェアが奪われるリスクがある。
軍事転用リスクが明確とは言えない技術についても、中国市場への持ち込みを慎重に判断するよう政府側から求められるケースがある。これについてどのように考えるべきかという内容だった。
これに対する筆者の答えは以下の通りである。
中国企業が必要とする高い技術水準の製品を日本企業が供給しなければ、中国企業が自社開発するか米欧企業等が日本企業に代わって供給する。
外国企業が中国企業の必要とする製品・サービスを供給しなければ、中国企業が何とか自分で生産し、徐々に技術格差を縮小して外国企業に追いつき、中国市場のみならずグローバル市場においても市場シェアを拡大するのは時間の問題である。
それはグローバル市場の同じ製品分野での中国企業の販売拡大につながり、日本企業は世界市場のシェアも失う。すなわち、「中国で負ければ世界で負ける」。
こうした認識は日本企業だけでなく、この数年、世界の一流企業の経営者からもしばしば聞かれる。
そうした事態を回避する方法は、中国市場で高度な技術水準の製品を供給し続け、競合メーカーとの競争に勝ち、中国市場で勝ち残るしかない。
中国市場で中国企業の需要に応じなければ、その製品・サービス市場を中国のみならず世界で失うことになる。
以上のような経済安保政策の影響に関する筆者の見方について、中国現地駐在の経験豊富な中国通の日本人経営者など数人に意見を求めたところ、全員が筆者の見方に賛同した。
日本政府の経済安保政策が、軍事技術や両用技術に関する規制の範囲を超えて、日本企業の自由な事業活動にまで介入するのは、米国政府による対中技術規制・輸出管理強化の影響を受けているものと推察される。
個別企業の対策としては、米国政府の動向に詳しい弁護士などの助けを借りて、何とか日本政府の理解を促して説得していくしかないのが実情である。
筆者が上記の質問に対してはっきり答えることができたのには、理由がある。
2026年2月下旬の米国出張の際に、米国の著名な中国専門家から「米国政府による安易なデカップリング政策は、世界市場における米国企業の影響力低下につながるリスクが大きい」との見方を聞いていたためである。
それは米国における具体例に基づいて示された説得力のある主張だった。
米国政府は中国のファーウェイ社に対して、米国企業による技術・製品供給などを厳しく制限してきた。
その結果、ファーウェイ社は米国企業の技術への依存を減らす必要に迫られ、スマートフォン向けOSについてもAndroidへの依存から脱却し、独自OS「HarmonyOS」の開発・普及を加速させた。
加えて、BluetoothやWi-Fiを代替・補完する次世代の短距離無線通信技術「NearLink(星閃)」の開発・普及も、ファーウェイ社が中心的に関与している。
米国政府がファーウェイ社に対する技術・製品供給を厳しく制限した結果、皮肉にも競争力のある代替技術の開発を促す一因となったのである。
こうした代替技術が普及すれば、米国企業が中国市場だけでなく第三国市場でもシェアを失う可能性があると、米国の専門家の間では指摘されている。
このように、米国政府による不用意な経済安保政策が招いた結果については、筆者の心に印象深く刻まれていた。
中国企業が日本の技術を学び、日本企業に追い付こうとする競争は今後も続き、しかも激烈で厳しい。しかし、その競争に勝てなければ市場を失う。
「中国企業と競争し続けるのは苦しいが、世界市場で生き残るにはその競争に勝ち残っていくしかない」
これが中国ビジネスの経験豊富な日本企業関係者のほぼ一致した意見だった。日本政府の経済安保政策関係者にこの声が届くことを願っている。
(注)キヤノングローバル戦略研究所ホームページ筆者コラム26.4.8掲載「主要国はトランプ大統領のイラン攻撃を批判できないが、米国内では支持率が低下 ~米国の西半球重視は言葉だけで、基本的な戦略方針に変化はない~」p.6~7を参照。