外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2024年4月3日(水)

外交・安保カレンダー(4月1日-7日)

[ 2024年外交・安保カレンダー ]


今週日本では「政治とカネ」問題で自民党関係者の「処分」があり、来週には岸田総理訪米もある。だからだろうか、日本マスコミの「大騒ぎ」はますます過熱している。総理訪米、しかも「国賓待遇」訪米となると9年振りだそうだから、官邸や外務省は勿論のこと、日本のメディアも、別の意味で、大いに気合が入っているのだろう。

それはそれで良いのだが、こんな時いつも気になるのは総理訪米と内政・政局を絡めた日本特有の記事だ。総理訪米報道は今もワンパターン。総理が訪米する、支持率がどうなる、政権浮揚のために何をアピールして、お土産をばら撒く…と分析するのだが・・・。だが、まずは今週筆者が最も気になった次のニュースから始めよう。

  • 4月1日、シリアの首都ダマスカスにあるイラン大使館の領事部がイスラエルによって攻撃され、将官7人が死亡した、とイランの革命防衛隊が発表した。

おいおい、まさかエイプリルフールではないよな。イスラエルは「遂にここまでやる」ようになった、ということか。ネタニヤフは本気でイランに喧嘩を売るつもりのようだ。

シリア国防省は「イスラエルの航空機が午後5時頃、ゴラン高原方面からイラン領事部の建物を攻撃した」と発表。同領事部は大使館の隣で、ダマスカス西部メゼ地区の高速道路沿いにあり、発射されたミサイルの一部はシリアの防空システムが迎撃したものの、他のミサイルが建物全体を破壊し、中にいた全員が死傷した、そうである。

筆者の見立てはこうだ。

いくらイランとはいえ、主権国家内にある外国大使館を意図的に攻撃することは、明らかに国際法違反である。一方、その大使館の領事部にイラン革命防衛隊の将官が7人もいたとなると、これは戦闘が前提の活動に近く、少なくとも通常の外交使節ではないだろう。その意味では「どっちもどっち」である。でも、ここまではあまり驚かない。

筆者が気になったのは今回の攻撃の正確さだ。イスラエルの攻撃がピンポイントで大使館を狙っていること、その中に(ちゃんと?)革命防衛隊の幹部がいたこと等を考えると、イスラエルの情報収集活動はまだ機能しているということだ。問題は言うまでもなく、今後のイランの出方である。

イスラエルはイランを挑発しているのか。イランの革命防衛隊が下手に過剰報復して、イスラエルや米国の施設・部隊に直接攻撃すれば、米軍は関与せざるを得なくなる。イランを挑発し、米国を対イラン戦争に巻き込み、ガザ戦争に関する米国からの圧力を回避しようとイスラエルは企んでいるのか。問題はイランがどう見ているかだ。

筆者がイランの最高指導者なら革命防衛隊の報復は(レトリックとしていかに厳しいものであっても)限定的なものに留めるだろう。米国の対イラン強硬派を勢い付けて本当に米イラン戦争になれば、恐らくイランは「得るもの」よりも「失うもの」の方が遥かに多いと計算するからだ。その意味でも、今後数日のイランの出方が気になる。

次は、冒頭お話しした総理訪米報道だ。政治部の記者に恨みがある訳では毛頭ないが、筆者は相変わらずの総理訪米・政局直結報道を忌み嫌っている。この問題意識を今週の産経新聞WorldWatchに書かせてもらった。なぜ毎回もこんな記事ばかりが流れるのか。

その理由の一つとして同コラムでは「首相訪米を仕切るのが政治部記者の多い官邸記者クラブだから」、「政治部記者なら当然、内政・政局に関心があるので、どうしても外交も内政に関連付けて報じる傾向がある。外報・国際部の専門記者とはかなり違う視点だ」などと論じている。ご関心ある向きはご一読願いたい。

続いては、欧米から見た今週の世界の動きを見ていこう。ここでは海外の各種ニュースレターが取り上げる外交内政イベントの中から興味深いものを筆者が勝手に選んでご紹介している。欧米の外交専門家たちの今週の関心イベントは次の通りだ。

4月2日 火曜日 米国務長官の仏訪問終了

         パキスタン上院選挙

         ASEAN財務相・中央銀行総裁関連会合(5日まで、ラオス)

4月3日 水曜日 NATO外相会議(4日まで)

         ハイチの非常事態宣言の期限

4月4日 木曜日 NATO創立75周年

         クウェート総選挙

         仏労組、公共交通部門でストライキ実施

4月7日 日曜日 ポーランドで地方選挙

4月8日 月曜日 ベネズエラがコロンビア政府と反政府ELNの仲介開始

最後は、いつもの中東・パレスチナ情勢だ。

  • 米イラン関係は小康状態が続いているが、上述のイランの報復の程度が気になる
  • ガザでは人質解放も停戦も総攻撃もないが、今後状況が改善する見込みは薄い

今週はこのくらいにしておこう。

2024年 重要日程レポート14【4月1日版】


<今週以前から続く会議>


2月26日‐4月5日 人権理事会、第55回会議(ジュネーブ)

4月

<4月1日‐4月7日>

1日 参院決算委員会
1日 嫡出推定制度を見直す改正民法が施行
1日 水道行政が厚生労働省から国土交通省に移管
1日 相続登記の申請を義務化する改正不動産登記法が施行
1日‐4月5日 UNCITRAL、第3作業部会(投資家対国家の紛争解決改革)、第48回会合(ニューヨーク)
1日‐4月5日 米国務長官、フランスとベルギー訪問
1日‐4月19日 軍縮委員会年次総会(ニューヨーク)
2日 米国大統領予備選挙(民主党・共和党:コネチカット州、デラウェア州、ニューヨーク州、ロードアイランド州、ウィスコンシン州)
2日 衆院法務委で「共同親権」法案が実質審議入り
3日 トルコ3月CPI発表
3日 ユーロスタット、2月失業率発表
3日 ブラジル2月鉱工業生産指数発表
3日 OPECプラスの合同閣僚監視委員会(JMMC)
3日‐4月4日 EU運輸・通信・エネルギー担当相理事会、非公式会合(運転)(ブリュッセル)
3日‐4月4日 IMTM-地中海観光国際展示会2024(テルアビブ)
3日‐4月4日 NATO外相会合(ブリュッセル)
4日 米国2月貿易統計発表
4日‐4月5日 第1768回経営管理と情報技術の進歩に関する国際会議・2024年(カンボジア)
5日 米国3月雇用統計発表
5日 ロシア2023年経済活動別・需要項目別GDP発表
5日 メキシコ3月自動車生産・販売・輸出統計発表
6日 米国大統領予備選挙(民主党:アラスカ州、ハワイ州、ノースダコタ州)
6日 スロバキア大統領選決選投票
7日‐4月9日 EU農水相理事会、非公式会合(農業)(ゲンク)

<4月8日‐4月14日>

8日 イスラエル中銀金融委員会会合
8日 3月の景気ウオッチャー調査(内閣府)
8日 2月の国際収支(財務省)
8日 3月の景気ウオッチャー調査(内閣府)
8日‐4月26日 人種差別撤廃委員会第112回会合(ジュネーブ)
9日 メキシコ3月CPI発表
10日 ブラジル3月IPCA発表
10日 米国3月CPI発表
10日 ロシア3月CPI発表
10日 韓国総選挙
10日 3月の企業物価指数(日銀)
10日 米FOMC議事要旨(3月19日、20日開催分)(FRB)
10日‐4月11日 欧州議会本会議(ブリュッセル)
11日 ウクライナ3月CPI発表
11日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会、金融政策(フランクフルト)
11日 メキシコ2月鉱工業生産指数発表
11日 ブラジル2月月間小売り指数発表
11日 中国3月CPI発表
11日 ユーロ・グループ(非公式ユーロ圏財務相会合)(ルクセンブルグ)
11日‐4月12日 EU運輸・通信・エネルギー担当相理事会(通信)(ルーバン・ラ・ヌーブ)
12日 中国第1四半期貿易統計発表
12日 ドイツ3月CPI発表
12日 フランス3月CPI発表
12日 インド2月鉱工業生産指数発表
12日 インド3月CPI統計発表
12日 EU経済・財務相(ECOFIN)理事会(ルクセンブルグ)
12日 CIS外相会議(ベラルーシ・ミンスク)
13日 米国大統領予備選挙(民主党:ワイオミング州)
14日 イスラエル3月貿易統計発表

<4月15日‐4月21日>

15日 イスラエル3月CPI発表
15日 米国財務省 半期為替政策報告書提出期限
15日 米国3月小売統計発表
15日‐4月16日 EU運輸・通信・エネルギー担当相理事会(エネルギー)(ブリュッセル)
15日‐4月19日 中国輸出入商品交易会(広州)
15日‐4月19日 UNCITRAL、第4作業部会(電子商取引)、第67回会合(ニューヨーク)
15日‐4月21日 IMF・世界銀行春季総会(米国・ワシントン)
15日‐4月26日 先住民族問題に関する常設フォーラム第23回会合(ニューヨーク)
15日‐4月26日 宇宙空間平和利用委員会法律小委員会、第63回会合(ウイーン)
15日‐5月10日 拷問禁止委員会、第79回会合(ジュネーブ)
16日 中国第1四半期経済指標(GDP、固定資産投資、社会小売品販売総額等)発表
15日‐5月31日 国際法委員会 第75回会合、第一部(ジュネーブ)
16日‐4月18日 経済社会理事会、ユース・フォーラム(ニューヨーク)
16日‐4月19日 アフリカ系住民常設フォーラム第3回会合(ジュネーブ)
17日 ユーロスタット、3月CPI発表
17日 米地区連銀景況報告(ベージュブック)(FRB)
17日‐4月18日 欧州理事会、非公式会合(ブリュッセル)
18日 G20財務相・中央銀行総裁会議(米国・ワシントン)
18日‐4月19日 EU雇用・社会政策・保健・消費者問題担当相理事会、非公式会合(消費者問題)(ブリュッセル)
19日 メキシコ2月小売・卸売販売指数発表
19日 EU外相理事会(ルクセンブルク)
19日‐4月21日 IMF・世界銀行春季総会(ワシントンDC)
20日 米国大統領予備選挙(共和党:ワイオミング州)
21日 米国大統領予備選挙(共和党:プエルトリコ)

<4月22日‐4月28日>

22日 EU外相理事会(ルクセンブルグ)
22日‐4月24日 IFAD理事会、第141回会合(ローマ)
22日‐4月25日 欧州議会本会議(ストラスブール)
22日‐4月26日 国連貿易開発会議(UNCTAD)、第14回会合(ジュネーブ)
22日‐4月26日 ESCAP、第80回会合(予定)(バンコック)
23日 米国大統領予備選挙(民主党・共和党:ペンシルベニア州)
23日‐4月24日 EU雇用・社会政策・保健・消費者問題担当相理事会、非公式会合(保健)(ブリュッセル)
23日‐4月27日 中国輸出入商品交易会(広州)
24日 ロシア第1四半期鉱工業生産指数発表
24日 北マケドニア大統領選挙(第1回投票)
25日 米国第1四半期GDP(速報値)発表
25日‐4月27日 北京国際汽車展覧会(北京)
26日 ロシア中央銀行理事会
26日 メキシコ2月貿易統計、雇用統計発表
28日 米国大統領予備選挙(民主党:プエルトリコ)
<4月29日‐5月5日>
29日 EU農水相理事会(ルクセンブルグ)
29日‐4月30日 EU一般問題理事会、非公式会合(ブリュッセル)
30日 ドイツ3月労働市場統計発表
30日 ウクライナ1~3月鉱工業生産指数発表
30日 ドイツ2024年第1四半期実質GDP成長率(速報値)発表
30日 フランス2024年第1四半期実質GDP成長率(速報値)発表
30日 ブラジル3月全国家計サンプル調査発表
30日‐5月1日 米国FOMC 

5月

1日 サウジアラビア2024年第1四半期GDP統計発表
1日‐5月5日 中国輸出入商品交易会(広州)
2日 香港第1四半期GDP(速報値)発表
2日 米国3月貿易統計発表
2日 韓国4月CPI発表
2日‐5月3日 OECD閣僚理事会(フランス・パリ)
2日‐5月5日 第56回アジア開発銀行総会(ジョージア・トビリシ)
3日 トルコ4月CPI発表
3日 ユーロスタット、3月失業率発表
3日 米国4月雇用統計発表
3日 ブラジル3月鉱工業生産指数発表
5日 パナマ総選挙
7日 EU外相理事会(開発)(ブリュッセル)
7日 メキシコ4月自動車生産・販売・輸出統計発表
7日 米国大統領予備選挙(民主党・共和党:インディアナ州)
7日 EU雇用・社会政策・保健・消費者問題担当相理事会・(平等)(ブリュッセル)
7日‐5月8日 ブラジル中央銀行、Copom
7日‐5月8日 ChipEx 2024(テルアビブ)
7日‐5月9日 サウジアラビア娯楽博覧会(SEA)(リヤド)
8日 ブラジル3月月間小売り調査発表
8日 北マケドニア議会選挙、大統領選挙(決選投票)
8日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会非金融政策(バーチャル会議)
9日 メキシコ4月CPI発表
9日 中国4月貿易統計発表
10日 英国2024年第1四半期GDP成長率(速報値)発表
10日 メキシコ3月鉱工業生産指数発表
10日 ブラジル4月IPCA発表
11日 中国4月CPI発表
12日 インド3月鉱工業生産指数発表
12日 イスラエル4月貿易統計発表
12日 リトアニア大統領選挙
12日 インド4月CPI統計発表
13日 ユーロ・グループ(非公式ユーロ圏財務相会合)(ブリュッセル)
13日‐5月14日 EU教育・青年・文化・スポーツ相理事(ブリュッセル)
13日‐5月14日 ASEANグリーン水素会議2024(マレーシア)
14日 米国大統領予備選挙(民主党・共和党:メリーランド州、ネブラスカ州、ウェストバージニア州)
14日 英国労働市場統計(2024年1~3月)発表
14日 ドイツ4月CPI発表
14日 ウクライナ4月CPI発表
14日 EU経済・財務相(ECOFIN)理事会(ブリュッセル)
14日‐5月16日 第33回欧州復興開発銀行(EBRD)年次総会(アルメニア・エレバン)
14日‐5月19日 経済サミット「ロシア - イスラム世界」(ロシア・カザン)
15日 ロシア2024年第1四半期GDP成長率速報値発表
15日 フランス4月CPI発表
15日 米国4月CPI発表
15日 イスラエル4月CPI発表
15日 サウジアラビア4月CPI発表
15日 米国4月小売統計発表
17日 中国4月固定資産投資、社会小売品販売総額発表
17日 APEC貿易担当相および女性担当相合同会合(ペルー・アレキパ)
17日 ロシア4月CPI発表
17日 フランス2024年第1四半期失業率発表
17日 ユーロスタット、4月CPI発表
17日‐5月18日 APEC貿易相会合(ペルー・アレキパ)
19日 ドミニカ共和国総選挙
20日 ウクライナ1~3月貿易統計発表
21日 米国大統領予備選挙(民主党・共和党:ケンタッキー州、オレゴン州)
21日 EU一般問題理事会(ブリュッセル)
21日 EU運輸・通信・エネルギー担当相理事会(通信)(ブリュッセル)
22日 英国4月CPI発表
22日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(非金融政策)(アイルランド)
23日 メキシコ第1四半期GDP発表
23日 トルコ中銀金融政策会議
23日 EU競争力担当相理事会・(研究・イノベーション、宇宙)(ブリュッセル)
23日‐5月25日 G7財務相会合(イタリア・ストレーザ)
23日‐5月25日 BEYOND EXPO(マカオ)(ヘルスケア、サステナビリティ、コンシューマーテック)
24日 EU競争力担当相理事会・(域内市場・産業)(ブリュッセル)
24日 メキシコ4月貿易統計発表
25日 米国大統領予備選挙(民主党:アイダホ州)
27日‐5月28日 EU外相理事会・(防衛)(ブリュッセル)
28日 OECD2024年第1四半期G20貿易統計発表
29日 ブラジル4月全国家計サンプル調査発表
29日 ロシア1~4月鉱工業生産指数発表
30日 メキシコ4月雇用統計発表
30日 米国第1四半期GDP(改定値)発表
30日 ユーロスタット、4月失業率発表
30日 EU外相理事会・(貿易)(ブリュッセル)
30日 トルコ4月貿易統計発表
30日 サウジアラビア4月貿易統計発表
30日 EU運輸・通信・エネルギー担当相理事会(エネルギー)(ブリュッセル)
5月中 ラオス第7回国会
5月中 CIS首相会議(トルクメニスタン・アシガバード)


宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問