外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2024年1月24日(水)

外交・安保カレンダー( 1月22日-28日)

[ 2024年外交・安保カレンダー ]


今週は内外で注目ニュース満載のため執筆が遅れてしまった。まずは先週お約束したホノルルのシンクタンクPacific Forumが開いたインド太平洋地域の安全保障に関するシンポジウムで考えたこと、から始めよう。詳細は今週の産経新聞World Watchに書いたので、お時間があればそちらもご一読願いたい。

コロナ禍もあってこの種の会議に参加するのは久し振りだ。同イベントにはインド太平洋軍司令官以下同軍幹部や豪元首相を含む関係国軍人・専門家が参加、台湾総統選後の地域安全保障環境について活発な議論が行われた。結論から言えば、インド太平洋軍は「本気」で対中抑止の強化を進めているということだ。

これまでの戦い方を変えない限り「インド太平洋地域での国際的秩序は失われる・・・」ということ。好むと好まざるとに関わらず、これは日本自身の問題でもある。もう一つ筆者が気になったのは「ガザ紛争拡大がインド太平洋軍の活動に及ぼす財政・作戦上の影響」だが、インド太平洋軍関係者から納得のいく回答はなかった。

今週執筆が遅れた最大の理由は米大統領選のニューハンプシャー(NH)州予備選が気になったからだ。同予備選直前にデサンティス・フロリダ州知事が選挙戦撤退を公表したことは予想より少し早かった。現在NH共和党予備選の焦点は「トランプにヘイリー(元サウスカロライナ州知事)がどこまで追い付けるか」に移りつつある。

本原稿執筆中にも出口調査の結果が出始めている。ヘイリーへの投票率はアイオワ州での党員集会の結果(トランプ51%、ヘイリー19%)よりかなり良くなるはず。直前の調査ではトランプ52%、ヘイリーが34%、現時点でのCNNの出口調査結果はトランプ53.6%に対しヘイリー45.4%だから、ある程度善戦とは言えるだろう。

しかし、これでヘイリーが生き残れると思うのは素人だ。理由は簡単。NH州予備選の仕組みが他の州と異なるからだ。同州では共和党の予備選挙に共和党登録有権者だけでなく、支持政党なし(undeclared)の登録有権者も共和党予備選に参加できるので、ヘイリー支持率は今後の他州予備選よりも高くなる可能性があるのだ。

逆に言えば、現在もトランプの優位は変わらず、ヘイリーがNH予備選で勝利するか、トランプと互角の数字でも出さない限り、共和党予備選の流れを変えることは難しい、ということである。NH予備選については来週詳述したい。

続いては、先週書けなかった、欧米から見た今週の世界の動きを見ていこう。ここでは海外の各種ニュースレターが取り上げる外交内政イベントの中から興味深いものを筆者が勝手に選んでご紹介している。欧米の外交専門家たちの今週の関心イベントは次の通りだ。

1月23日火曜日 トルコ国会、スウェーデンのNATO加盟につき投票

        欧州委員会大統領とクロアチア首相、ボスニアヘルツェゴビナ訪問

1月24日水曜日 アルゼンチンの労組連合が全土でストライキ

        スロバキア首相、訪独

1月25日木曜日 トルコと南アフリカの中央銀行が公定歩合を決定

        仏大統領、インド訪問(26日まで)

        ネパール、上院選挙

1月26日金曜日 ツバルで総選挙

1月28日日曜日 フィンランドで大統領選挙

1月29日月曜日 イラン外相、パキスタン訪問

        コロンビアで国内の反政府麻薬勢力との6カ月休戦が期限に

最後は、いつものパレスチナ情勢だ。筆者の見る現時点での状況は次の通り。

  • アメリカはイスラエルに停戦を働き掛けているが、ネタニヤフは戦闘を続けるつもりで、両国間の亀裂は深まっている
  • イスラエルが人質解放のため最大2カ月の停戦を提案したと報じられたが、どこまで本気で、どこまでポーズなのか正直分からない
  • 数週間前筆者は「イスラエルは戦闘を止めないだろう。最悪の場合、これから数週間は徹底的なハマス掃討作戦が続き、パレスチナ非戦闘員の大量犠牲も続くだろう」と書いたが、こうした考えは今も基本的に変わらない
  • イランは米軍との直接戦闘は望んでいないだろうが、逆に言えば、直接戦闘の手前まで対米「代理戦争」を続けるだろう

今週はこのくらいにしておこう。



2024年 重要日程レポート4【1月22日版】

2024年 1月

<今週以前から続く会議>

1月15日‐2月2日 子どもの権利委員会 第95回会合(ジュネーブ)

<1月22日‐1月28日>

22日 香港2023年12月CPI発表
22日 台湾2023年12月雇用統計発表
22日 台湾2023年12月投資統計発表
22日 中国人民銀行が最優遇貸出金利(LPR)発表
22日 EU外相理事会(ブリュッセル)
22日‐1月23日 日銀金融政策決定会合
22日‐1月26日 第4回小島嶼開発途上国国際会議準備委員会、第1回会合(ニューヨーク)
22日‐1月26日 UNCITRAL、第3作業部会(投資家対国家の紛争解決改革)、第47回会合(ウイーン)
22日‐1月26日 国連貿易開発会議(UNCTAD)、プログラム計画及びプログラム実績に関する作業部会、第87回会合(ジュネーブ)
22日‐1月27日 WHO、第154回理事会(ジュネーブ)
22日‐1月28日 軍縮会議・第一部(ジュネーブ)
22日‐1月31日 非政府組織委員会、定例会合(ニューヨーク)
22日‐2月2日 人権理事会、普遍的定期的審査作業部会、第45回会合(ジュネーブ)
22日‐3月8日 第60回大陸棚限界委員会(ニューヨーク)
23日 米大統領選で共和党ニューハンプシャー州予備選
23日‐1月24日 経済社会理事会、特別会合(サンティアゴ)
23日‐1月26日 日中経済協会合同代表団が訪中
24日 経団連労使フォーラム(経団連会館)
24日 石油製品価格調査(経産省)
25日 韓国最高裁、元挺身(ていしん)隊訴訟で判決(ソウル)
25日 メキシコ2023年12月雇用統計発表
25日 米国2023年第4四半期GDP発表(速報値)
25日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会、金融政策(フランクフルト)
25日 国連環境計画(UNEP)常設代表委員会第165回会合(ナイロビ)
26日 メキシコ2023年12月貿易統計発表
28日 フィンランド大統領選

<1月29日‐2月4日>

29日‐2月2日 常任理事会、第1回定例会(ニューヨーク)
29日‐2月2日 UNDP/UNFPA/UNOPS理事会、第1回定例会合(ニューヨーク)
29日‐2月9日 情報通信技術の犯罪目的使用への対処に関する包括的国際条約策定特別委員会、最終会合(ニューヨーク)
29日‐2月9日 拷問禁止委員会、拷問及びその他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰の防止に関する小委員会、第50回会合(ジュネーブ)
30日 インド2023年度第2四半期GDP発表
30日 フランス第4四半期実質GDP成長率(速報値)発表
30日‐1月31日 米国FOMC
30日 国連経済社会理事会、パートナーシップ・フォーラム(ニューヨーク)
31日 米FOMC最終日(FRB)
31日 ブラジル2023年12月全国家計サンプル調査発表
31日 香港2023年第4四半期経済状況発表、2023年通年GDP成長率発表(速報値)
31日‐2月1日 国連経済社会理事会調整部(ニューヨーク)
31日‐2月2日 軍縮に関する諮問委員会 第81回会合(ジュネーブ)
1月中 OECD2023年第3四半期海外直接投資(FDI)統計発表
1月中 WTO2023年第3四半期サービス貿易統計発表

2月

1日 ロシア制裁の対象となる外国企業の資産を封鎖する法律が発効
2日 米国1月雇用統計発表
2日 ブラジル2023年12月鉱工業生産指数発表
5日‐2月8日 欧州議会本会議(ストラスブール)
5日‐2月8日 第3回国連内陸開発途上国会議準備委員会第1回会合(ニューヨーク)
5日‐2月9日 子どもの権利委員会、準会期作業部会、第97回会合(ジュネーブ)
5日‐2月9日 人権理事会、人権と多国籍企業およびその他のビジネス企業の問題に関する作業部会、第37回会合(ジュネーブ)
5日‐2月9日 第139回国際麻薬統制理事会(ウイーン)
6日‐2月9日 ユニセフ理事会、第1回定例会合(ニューヨーク)
7日 米国12月貿易統計発表
7日 メキシコ1月自動車生産・販売・輸出統計発表
7日 ブラジル2023年12月月間小売り調査発表
8日 連邦総選挙実施(パキスタン)
8日 メキシコ1月CPI発表
9日 ドイツ1月CPI発表
9日 メキシコ2023年12月鉱工業生産指数発表
12日 インド2023年12月鉱工業生産指数発表
12日 インド2024年1月CPI統計発表
12日‐2月16日 UNCITRAL、第2作業部会(紛争解決)、第79回会合(ニューヨーク)
12日‐2月23日 ICAO、第231回委員会段階(モントリオール)
12日‐3月1日 経済的、社会的及び文化的権利委員会 第74回会合(ジュネーブ)
12日‐3月29日 ICAO(国際民間航空機関)第225回会議(モントリオール)
13日 英国労働市場統計(2023年10~12月)発表
13日 米国1月CPI発表
13日 フランス2023年第4四半期失業率発表
14日 大統領選挙(インドネシア)
14日 英国1月CPI発表
14日‐2月15日 IFAD管理理事会 第47回会合(ローマ)
15日 イスラエル1月CPI発表
15日 米国1月小売売上高統計発表
15日 英国2023年第4四半期GDP成長率(速報値)発表
16日 フランス1月CPI発表
16日 ロシア中央銀行理事会
19日 EU外相理事会(ブリュッセル)
19日 日ウクライナ経済復興推進会議(東京)
20日 EU一般問題理事会(ブリュッセル)
21日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会・非金融政策(バーチャル会議)
21日 メキシコ2023年12月小売・卸売販売指数発表
21日‐2月22日 G20外務相会合(ブラジル・リオデジャネイロ)
22日 メキシコ2023年第4四半期GDP発表
22日 OECD2023年第4四半期G20貿易統計発表
22日 香港2024年1月CPI発表
23日 ユーロ・グループ(非公式ユーロ圏財務相会合)(ゲント)
25日‐2月29日 EU外相理事会・(貿易)(アブダビ)
26日 イスラエル中銀金融委員会会合
26日‐2月27日 EU農水相理事会(ブリュッセル)
26日‐2月29日 WTO閣僚会合(MC13)(UAE・アブダビ)
27日 メキシコ1月貿易統計発表
27日‐2月29日 エイラート・エイロット第10回再生可能エネルギー会議2024(イスラエル・エイラート)
28日 米国2023年第4四半期GDP(改定値)発表
28日 香港2024~2025年度財政予算案発表
28日‐2月29日 G20財務相・中央銀行総裁会議(ブラジル・サンパウロ)


宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問