外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

  • 当サイト内の署名記事は、執筆者個人の責任で発表するものであり、キヤノングローバル戦略研究所としての見解を示すものではありません。
  • 当サイト内の記事を無断で転載することを禁じます。

2021年6月15日(火)

外交・安保カレンダー(6月14-20日)

[ 2021年外交・安保カレンダー ]


菅首相にとって初の対面G7サミットはまずまずだった。トランプ氏がいなくなり、G7首脳会議は本来あるべき姿に「戻った」、とまでは言わない。しかし、すべての参加国首脳が「戻そう」と努力したことは間違いなかろう。今回は首脳宣言初の「中国」名指し言及でG7は「一致して中国に厳しい姿勢を示した」と報じられている。

ところが首脳宣言を詳しく読めば、中国を名指ししたのは一か所だけ、「特に新疆や香港との関係で人権や基本的自由を尊重するよう中国に求めることを含め、G7の価値を推進していく」とした部分のみだ。大陸欧州諸国がかなり抵抗したのだろう。内容的には日米の事前の思惑と随分異なる結果なのかもしれない。

従来の関連文書と比較しても、今回の表現は見劣りする。例えば、4月の日米共同声明では「中国の行動について懸念を共有」したと述べ、5月のG7外務・開発大臣会合コミュニケでも、「我々は中国に対し、国際法及び国内法上の義務に従い、人権及び基本的自由を尊重するよう求める。」と明確に述べていたからだ。

この点については、今週の産経新聞コラムなどに書いたのでご一読願いたい。米国内、特に共和党保守派の間では、「G7は中国に対する懸念よりも、中国に対する具体的行動で一致すべきだった」とする批判も根強いと聞く。中国側は猛反発しているが、G7の正常化に伴い、米中間の新しいゲームは既に始まっている。

それはさておき、欧米メディアの関心は既にNATO首脳会議など、トランプ時代にギクシャクした欧米関係や今週の米露首脳会談の行方に移っている。バイデン大統領はプーチン大統領と如何にやり合うつもりなのだろうか。「頑張ってほしい」とは思うが、つい前回米露首脳会談でのトランプ氏の異様かつ無様な姿を思い出す。

今週もう一つの注目点は、イスラエルで平和的政権交代が実現したことだ。先週は「本当に首相が交代するか確信が持てない」と書いたが、やはりイスラエルは民主主義の国、パレスチナのように選挙が全く行われない地域や人々とは、一味も二味も違うようである。

先週も書いた通り、たった数人の寝返りや裏切りでも、多数派工作は崩壊する。議会での新内閣承認投票の際に突発事件が起きなかったことは幸いだが、ベネット新内閣は極右からアラブ政党まで含む「有象無象」の妥協の産物であり、政権運営は文字通り「薄氷を踏む思い」だろう。次の焦点はネタニヤフの「政治生命」である。

〇アジア

G7サミットでは日韓首脳会合は勿論、日米韓首脳会合も開かれなかった。当然と言えば当然。だが韓国の大統領府は、夫人プログラムの最中に文大統領夫人が菅首相夫人に先に近付き、「このように初めて会うことになりうれしい」と挨拶を交わしたと伝えたそうだ。韓国側は、菅首相と会談できず、かなりショックだったのだろうか。

〇欧州・ロシア

バイデン大統領の英国訪問時、女王が大統領に「習近平はどんな人か」と尋ねたと報じられた。ふと、習近平英国公式訪問の際に女王が中国側代表団は「とても失礼だった」と発言していたことを思い出した。余程不愉快だったのだろうか。それにしても、エリザベス女王の知的好奇心は今も旺盛のようだ。お元気で、何よりである。

〇中東

今週はNATO首脳会談の際に米トルコ首脳会談が行われるはず。トルコといえばNATOの有力加盟国でありながら、ロシア製防空システムを買い込むなど、米国との確執が懸念されている。報道によれば、トルコと関係に劇的進展は難しいといわれるが、個人的には今回の首脳会談で何らかの糸口が見つかれば良いと思う。

〇南北アメリカ

米国では、大統領がトランプだろうが、バイデンだろうが、銃の乱射事件が続いている。ある統計によれば、その頻度は毎日とは言わないが、数日に一回は起きている。また、銃規制と同様に懸案である違法移民問題では、ハリス副大統領が「国境に行くか行かないか」で批判されている。米国の内政も相変わらずのようだ。

〇インド亜大陸

インドでは、新規感染者が過去2カ月あまりで最低の水準に減少し、デリー首都圏を含め多くの州で新型コロナウイルスの規制が緩和されたそうだ。今週はこのくらいにしておこう。

5月10-6月25日 国連軍縮会議 second part(ジュネーブ)
5月23日- 6月20日 日本・沖縄が緊急事態宣言開始
7-25日 ICAO(国際民間航空機関) Council Phase 第223回会合(モントリオール)
9-19日 ITU(国際電気通信連合)理事会 第2021回会合(ジュネーブ)
12-14日 中国端午節休暇
12-15日 米ゲーム見本市「E3」一般公開日(オンライン)
13日、20日 フランス地域圏議会選挙、県議会選挙
13-22日 バングラデシュ・モメン外相が米国を訪問
14日 NATO首脳会議(ブリュッセル)
14日 米トルコ首脳会談(ブリュッセル)
14日 ギリシャ・ミツォタキス首相とトルコ・エルドアン大統領の首脳会談(ブリュッセル)
14-15日 雇用・社会政策・健康・消費者問題担当相理事会(ルクセンブルク)
14-17日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
15日 米EU首脳会議(ブリュッセル)
15日 米国5月小売売上高統計発表
15日 ロシア第1四半期経済活動別GDP統計発表(速報値)
15日 国連軍縮諮問委員会 第76回会合(ニューヨーク)
15日 日本・「自由で開かれたインド太平洋」推進議連が発足(自民党本部)
15-16日 米国FOMC
15-16日 ブラジル中央銀行、Copom
15-19日 FAO総会 第42回会合(ローマ)
16日 APEC構造改革担当相会合(バーチャル)
16日 第8回ASEAN国防高官会議プラス
16日 中国5月固定資産投資、社会消費品小売総額発表
16日 ロシア1-5月鉱工業生産指数発表
16日 米ロ首脳会談(ジュネーブ)
16日 米黒人暴行死事件で元警官に量刑言い渡し
17日 ユールグループ(ルクセンブルク)
17日 EU 5月CPI発表
17日 ロシア5月CPI発表
17日 国連軍縮諮問委員会 第76回会合(ニューヨーク)
17日 長征2F(神舟12号)打ち上げ(甘粛省酒泉衛生発射センター)
18日 EU経済財務相(ECOFIN)理事会(ルクセンブルク)
18日 イラン大統領選
18日 CIS経済理事会(モスクワ)
18日 第90回ASEANビジネス諮問委員会会議
18日 国連総会で事務総長再選へ(オンライン)
18日 ファルコン9(GPSIII-05)打ち上げ(ケープカナベラル空軍基地)
18日 長征2C(遥感30号-09A, 09B, 09C)打ち上げ(四川省西昌衛星発射センター)
20日 外相理事会(貿易)(ブリュッセル)
20日 アルメニア議会選
20日 静岡県知事選
20日・27日 フランス 地域圏議会選挙、県議会選挙

<21-27日>
21日 EU環境相理事会(ルクセンブルク)
21日 エチオピア下院議院選
21-22日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
21-23日 UNウィメン 執行理事会 年次会合(ニューヨーク)
21-25日 WFP執行理事会 年次会合(ローマ)
22日 一般問題理事会(ルクセンブルク)
22日 G20教育相会合(イタリア・カターニャ)
22-26日 包括的核実験禁止条約機関準備委員会(CTBTO)第56回会合(ウィーン)
22-7月16日 UN人権理事会 第47回会合
22-23日 APEC財務実務者会合
23日 G20労働雇用相会合(カターニャ)
23日 G20労働雇用相・教育相合同会合(カターニャ)
23日 メキシコ4月小売・卸売販売指数発表
23日 ロシア1-4月貿易統計発表
23-24日 EU欧州議会本会議(ブリュッセル)
23-25日 ベトナムMining Vietnam 2021(ハノイ)
24日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
24日 米国第1四半期GDP発表(確定値)
24日 メキシコ5月雇用統計発表
24日 ジブラルタル住民選挙
24日 ファルコン9(Aurora, Capella5,6基のHawk, ICEYE等)打ち上げ(ケープカナベラル空軍基地)
24-25日 欧州理事会(ブリュッセル)
25日 APEC非公式財務相会合
25日 アルバ議会選
27日 黒海経済協力機構(BSEC)年次総会


宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問