コラム  グローバルエコノミー  2022.04.21

ロシアのウクライナ侵攻と米中関係

~中国のロシア寄り姿勢が招く孤立リスク~

<2022年2月28日~3月18日 米国欧州オンライン定期面談報告>

国際政治・外交

<主なポイント>

〇ロシアがウクライナ侵攻に踏み切った背景は、短期的にはプーチン大統領が西側諸国の国力および結束力、ウクライナ軍の抵抗力を過小評価する誤算があったこと、長期的にはNATOの東方拡大、ウクライナにおける他民族迫害等が指摘されている。

〇ロシア軍によるウクライナへの非人道的攻撃の実態がSNSを通じて世界中の消費者に伝えられた。これによりレピュテーションリスクを恐れる企業がロシア事業を自発的に停止。これはソーシャルメディア戦争と呼ばれる新たな戦争形態である。

〇ウクライナ侵攻後、ロシアと中国が一体として西側の敵対相手と位置付けられ、世界の中で孤立しつつある。中国外交部報道官が厳しい対米批判を繰り返すため、この発言が米国側の強い反発を招き米中関係は再び悪化の方向に向かっている。

〇SNS等を通じて多くの中国人がウクライナ侵攻の実態を把握し始めている。実態が伝わっていなかった当初はロシア支持の声が圧倒的だったが、時間の経過とともにウクライナ支持の意見が強まり、国内の意見は分断され二極化している。

〇トランプ政権以降、米国が中心となって、外交、安保、経済、政治体制等あらゆる面で中国を敵視した結果として、中国は米中関係の回復をほぼ諦めている。米中両国が2国間で関係を修復することは非常に難しくなったと見られている。

〇今回西側諸国が迅速かつ強固な結束を示したことで、中国が台湾に武力侵攻する場合、西側の結束が脅威となることがはっきり見えたため、台湾への武力侵攻はより慎重に考えざるを得なくなったとの見方が中国専門家の共通認識となっている。

〇中国は、米中対立、主権・領土への干渉反対の立場、西側諸国との経済関係重視という前提の上で、ロシア寄りか、西側寄りか、難しい判断を迫られている。

〇中国が西側諸国との関係改善を望む場合、戦争調停への支援が糸口になる可能性がある。日本と欧州の政治リーダーがともに習近平主席に働きかける形で側面支援に加われば、中国が一定の役割を担うことが期待できるとの見方がある。

〇ポンペオ元国務長官が3月4日台湾で講演を行い、米国は台湾を主権国家として認証すべきであると発言。多くの中国専門家は、こうした中国挑発は米中武力衝突リスクをさらに拡大するものであり、正常な判断ではないと強く警告している。

〇バイデン政権は米国民の反中感情と中間選挙を考慮してポンペオ発言に対してそれほど厳しい批判姿勢を示してはいない。米国ではソーシャルメディアの影響力の増大により異なる考え方を排除する傾向が強まり、建設的な意見も無視されている。

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