メディア掲載  グローバルエコノミー  2022.03.16

安定的経済成長の道を模索する中国:金融リスク対応はいかに

『国際金融』1350号/2021年11月号(一般財団法人・外国為替貿易研究会)に掲載

中国

要旨

  • 2010年代に高度経済成長が終焉を迎えると、中国政府は、新たな成長モデルを追求するために、「供給サイドの構造改革」を提唱した。しかし、潜在成長力が低下する中での強い痛みを伴う改革の推進は容易ではなく、さらに米中摩擦の深刻化や新型コロナウィルス感染症の蔓延が加わったこともあり、近年、経済政策面では安定への配慮がより強く求められるようになっている。
  • 中国のWTO加盟は、同国銀行部門に財務基盤の立て直しを促した。主要商業銀行は与信能力を回復し、2008年のグローバル金融危機時には、その対策として政府が打ち上げた「4兆元の景気刺激策」に積極的に呼応した。また、2010年代には、フィンテックが新たな金融サービスの広がりをもたらした。
  • ただし、金融セクターからの資金供与の急増は、債務返済負担として企業や地方政府関連事業体に重くのしかかるようになり、近年はその是正が重要政策課題となっている。これまでのところ、中国におけるデレバレッジの進展は限定的で、2018年頃から社債のデフォルト、銀行業金融機関の不良債権の増加、一部中小銀行の経営破綻、不動産企業の債務不履行など、金融リスクの顕現化が懸念されている。
  • 中国がいわゆる「中所得国の罠」を回避して「共に豊かになる」道を歩むためには、なお高いハードルをいくつか越えなければならない。金融面では、足元のリスクを抑え込み、その教訓を基にリスク管理能力の高い金融システムを構築することが重要な課題であり、より広い視野でみた最大の課題は、高齢社会到来への対応であろう。

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