メディア掲載  エネルギー・環境  2022.03.15

中国依存の脱炭素は愚かだ

CO2と独裁国家、どちらが喫緊の脅威なのか?

「文藝春秋」2022年3月号掲載

エネルギー・環境

地球温暖化問題への対策として、いま日本は「脱炭素」に邁進している。だが、これはもはや単なる環境問題を超えて、日本という国家の生存を左右する問題になっている。このまま脱炭素に突き進むならば、中国はますます強くなり、日本は弱くなる。畢竟、日本の自由、民主といった基本的な価値すら危うくなる。

20214月、新任のバイデン米大統領は、気候サミットを開催した。G7を構成する先進国は軒並み「2030年までにCO2等の温室効果ガス排出を半減、2050年までにゼロ」を宣言した。

日本も追随し、菅義偉首相(当時)は、「2050年までにCO2ゼロ」「2030年までに2013年比で温室効果ガスを46%削減する」と宣言した。

これに対して、中国はどうだったか。中国はCO2をゼロにする時期は2060年として、2050年への前倒しはしなかった。そして何よりも、「2030年までCO2等を増やし続ける」という計画を変えなかった。

この手のことで大事なのは、2050年といった遠い将来のことではなく、直近、せいぜい十年以内の約束だ。その肝心なところで、先進国と中国は正反対の約束をしたのである。

202111月の国連気候変動枠組条約締約国会議(COP26)でも、この構図はまったく崩せなかった。詳しくは後述するが、中国は何一つ譲らなかった。

本論に入る前に、脱炭素とは一体どういうことなのか、おさらいしておこう。

CO2は、石炭・石油・天然ガスなどの化石燃料を燃焼することによって発生する。脱炭素とは、これを発生させないということだ。すると、石炭、石油、天然ガスを使わないことになる。

しかし現代の経済は、まさに化石燃料の利用によって成り立っている。自動車はガソリンで、トラックはディーゼル燃料で動いている。工場に行けば、蒸気を沸かすボイラーや、材料を加熱するための炉がある。これらは石油やガスを燃料にしている。

もちろん、化石燃料を使う代わりに、電気を使うことも出来る。けれども、電気を起こすためにも化石燃料が必要だ。いまなお、日本では石炭と天然ガスによる発電が7割を占めている。水力発電所はもうこれ以上建てる場所がない。原子力発電所の新規建設は政治的に容易でない。太陽光発電や風力発電は出力が安定しないのでその割合を高くすると停電が起きる。

したがって、「脱炭素」をするとなると、経済活動に重大な支障が出る。G7諸国の「2030年半減、2050年ゼロ」というCO2排出の目標は、出来るはずがない。のみならず、それを無理に目指すならば、工場は閉鎖され、物価は上がり、経済は崩壊する。

ところがCOP26で、日本をはじめ先進国は無謀な約束をしてしまった。これは一方的な自滅への道だ。

先進国が2030年の目標を守れないことは年々明白になる。中国はそれを大いに非難し、外交上の優位に立つだろう。

そして先進国は太陽光発電や電気自動車を大量導入するであろうが、それは中国からの原材料の輸入を意味し、大いに中国を利することになる。他方で先進国は重い経済的負担を抱える。中国は敵の自滅をみて、笑いが止まらないはずだ。

一歩も譲歩しない中国

COP26で採択されたグラスゴー気候合意について、NHKは「COP26閉幕 気温上昇1.5℃に抑制「努力追求」成果文書採択」(1114日付ニュースウェブ)とまとめており、いかにもその成果として1.5℃目標に合意したかのように書いている。

けれども、1.5℃抑制への「努力追求」というのは、2015年に締結されたパリ協定にもともとあった文言を踏襲したに過ぎない。のみならず、中国の脱炭素の目標年を2050年へ前倒しすることさえ出来なかった。

合意文書を見ると、2050年の目標については「今世紀の半ばまでまたはその頃に(by or around)」脱炭素をする、となっている。ここでor aroundとなっているのは、中国の2060年という脱炭素の目標年は変えなくてよいための譲歩だ。

結局、この合意文書はこれまで中国が宣言してきたことを追認したにすぎなかった。

石炭火力発電についてはどうか。合意文書では、石炭火力発電の「削減(phasedown)に向かっての努力を加速する」ことを「COPが諸国に呼びかける」となっている。

しかしこの文言は、英国がCOP26前後にしきりにメディアに訴えていた「石炭の終焉」というイメージからは程遠い。

米国民主党の売国外交

じつはこのphase down(削減する)という文言は、COP26会期中に発表された米中グラスゴー共同宣言で先に用いられたものだ。

中国は現行の第145か年計画の下で、2025年までの5か年でCO2排出を1割増やすことになっている。中国は日本の10倍のCO2を排出しているから、この増分だけで日本の年間排出量に匹敵する量だ。

だがその後の第155か年計画においては、元々、発電用の石炭消費量は低下すると見られていた。ガス火力、原子力や再生可能エネルギーなどが導入されるからだ。現在の中国は石炭火力の割合が高すぎるから、そのほうが発電全体としてのバランスが良くなるのだ。

つまり、この「削減」という合意も、中国の考えを追認しているものに過ぎず、中国に譲歩を迫ったというようなものではない。バイデン政権の対中融和的な姿勢がよく見える。

だが呆れたことに、これと引き換えに米国は、2035年までに発電によるCO2排出をゼロにするというとんでもない約束をした。どう考えても出来るわけがない。今後、中国はこの文言を持ち出しては米国を非難するだろう。

ちなみにこの米中合意、短いので簡単に読めるが、ひたすら「〇〇に協力します」といったことばかり書き連ねてある。この中で中国は、上述の石炭の「削減」以外、何一つ約束していない。

ではこの合意はいったい何だったのか?

要は米中両政権とも、「気候変動については協力が重要だ」というメッセージを出したかっただけなのだ。

バイデン政権としては、気候変動を理由に、中国との経済関係を作りたい。中国としては、近年になって冷え込んでいる米国との外交関係を改善し、対中包囲網に穴を穿つ格好の機会になった。両政権の利害が一致したわけだ。

それにしても、出来もしない約束を中国相手にしてしまうあたり、米国民主党政権の国際交渉は売国的ですらある。

電気料金はすでに1.5倍に

さて菅政権の時に、日本は2030年までのCO2削減目標(2013年比)を26%から46%へと、20%も引き上げた。

そしてエネルギー基本計画には「再エネ最優先」と書き込まれた。これは当時の小泉進次郎環境大臣と河野太郎規制改革担当大臣が押し込んだものだ。

だがこれを実現しようとすると、いったい、いくら費用がかかるのか。政府は沈黙したままだ。

これまでの実績を見てみよう。過去10年間、「固定価格買取制度」の下で、再生可能エネルギーは大量導入されてきた。これによるCO2削減量は年間約2.4%に達している。

ところがこれには莫大な費用が掛かった。それを賄うため、「再生可能エネルギー賦課金」が家庭や企業の電気料金に上乗せされて徴収されてきた。この賦課金は総額で年間約2.4兆円(2019年度)に達している。

これは一人あたりで約2万円、3人世帯では6万円になる。3人世帯の電気料金はだいたい月1万円だから、年間では12万円くらいだ。すると、12万円に対して6万円だから、賦課金によって実質的に電気料金が1.5倍になるほどの、極めて重い経済負担がすでに発生しているわけだ。

国の総額でみると2.4兆円の負担で2.4%の削減だから、これまでの太陽光発電等の導入の実績から言えば、CO2削減量1%あたり毎年1兆円の費用が掛かっているわけだ。

すると単純に計算しても20%の深掘り分だけで、毎年20兆円の費用が追加で掛かることになる。

20兆円は巨額だ。

いまの消費税収の総額がたまたま20兆円である。すなわち、20%もの数値目標の深掘りは、消費税を倍増することに匹敵する。

これを世帯当たりの負担に換算してみよう。

20兆円は一人あたり約16万円、世帯あたりだと3倍の48万円になる。電気料金が12万円で、それに48万円が上乗せされるとなると、電気料金が実質5倍の60万円になる、という計算になる。

もちろん、現実にはすべてが家庭の負担になるわけではない。だが企業が負担するとしても、給料が減ったり物価が上がったりして、結局は家庭の負担になる。2030年といえば8年後だ。

これに国民が耐えられるとは、到底思えない。脱炭素は必ず破綻する。

太陽光発電という環境破壊

太陽光発電パネルは確かに従前よりは安くなった。だが、それでもまだ電気料金への賦課金を原資に、寛大な補助を受けている。

それに太陽が照った時しか発電できない間欠性という問題は、まったく解決していない。このためいくら太陽光発電を導入しても火力発電所は相変わらず必要なので、結局は二重投資になる。仮に火力発電所を減らしてしまえば、こんどは停電のリスクが高くなる。

のみならず、安価に設置できる場所も減ってきており、これも今後の高コスト要因になる。小泉前大臣は「まだ空いている屋根があるから設置をすれば良い」と言ったが、なぜその屋根がまだ空いているのか、理由を考えなかったのだろうか? これまでも莫大な補助が与えられてきたにもかかわらず、それでも採算が合わなかったからなのだ。

そもそも太陽光発電が環境に優しいかも疑わしい。

大変よく誤解されていることだが、太陽光発電や風力発電は「脱物質化」「環境にやさしい発電」などでは決してない。むしろその逆である。

太陽光発電や風力発電は、確かにウランや石炭・天然ガスなどの燃料投入は必要ない。だが一方で、広く薄く分布する太陽や風のエネルギーを集めなければならない。このため原子力や火力発電よりも数多くの発電設備が必要となり、大量のセメント、鉄、ガラス等の材料を投入せねばならない。

結果として廃棄物も大量になる。これは近年になって問題となり、廃棄費用を太陽光発電事業者から強制的に徴収し積み立てる制度がようやく2022年に実施される段取りになっている。

屋根ではなく地上に設置する方がコストは安くなるが、広い土地を使う。農地や森林がその代償で失われる。施工が悪ければ台風などで破損したり土砂災害を起こしたりして近隣に迷惑がかかる。

2021年の熱海の土石流事故におけるメガソーラーとの因果関係はいまなお調査中であるが、それは別にしても、施工の悪い危険なメガソーラーは全国至るところにある。

太陽光発電はCO2排出こそ少ないが、デメリットは多い。しかも問題はこれに止まらない。

ウイグル人強制労働の産物か

太陽光発電でいま最も普及しているのは「結晶シリコン方式」である。この太陽光発電の心臓部は、シリコン鉱石を精錬して作られる結晶シリコンと呼ばれる金属である。これに太陽光が当たることで電気が発生する。

世界における太陽光発電用の結晶シリコンの80%は中国製である。そして、そのうち半分以上が新疆ウイグル自治区における生産であり、世界における新疆ウイグル自治区の生産量のシェアはじつに45%に達する。

高いシェアの理由は、安価な電力、低い環境基準、そして低い賃金である。多結晶シリコンの生産には、大量の電力が必要である。新疆ウイグル自治区では安価な石炭火力でこれを賄っている。また製造工程では大気・土壌・水質に環境影響が生じうるので、規制が厳しいところではコスト要因になってしまう。

では、賃金が低い理由は何か。じつは昨今指摘されているウイグル人の強制労働に太陽光発電産業も関わっている疑いがある。

202110月、G7貿易相会合が開かれて、サプライチェーンから強制労働を排除する声明が発表された。これは中国の新疆ウイグル自治区における強制労働などを念頭に置いたものだ。

そして、日本政府の発表でも国内報道でも書かれていないが、声明を原文で読むと、太陽光発電は農産物、衣料品と並んで、名指しでリストに挙がっていた。

米国は、すでに中国製の太陽光パネルの中国からの輸入を事実上禁止している。

日本も対応を迫られるのは必至である。いや、受け身ではなく、自らが判断しなければならない時だ。

残念ながら、太陽光発電の現状は、「屋根の上のジェノサイド」と呼ぶべきおぞましい状況にある。

しかしながら日本では、菅政権時に検討されたエネルギー基本計画が岸田文雄政権によって閣議決定され、再生可能エネルギーは「最優先」で大量導入されることになっている。

だが、いったいどうやって、それを強制労働排除と両立させるのか。これまで、エネルギー基本計画の審議では、まったく言及されてこなかった。

なお中国当局によると、新疆ウイグル自治区の収容所は、貧困と分離主義に対応して設立された「職業技能教育訓練センター」であるという。中国の外務省は、強制労働という批判を「完全な嘘」と呼んで否定している。

サイバー攻撃に脆弱な電力網

中国製の太陽光発電設備が日本の電力網に多数接続されると、サイバー攻撃のリスクも高まる。

電力網がサイバー攻撃の対象となっていることは、今や世界の常識である。2015年にはロシアのサイバー攻撃によってウクライナで停電が起きた。

サイバー攻撃の内容は、ウイルスやバックドアによる情報の窃盗から、通信・制御システムの乗っ取りだけでなく、さらには電力網の停電や、発電所の破壊にも及びかねない。

太陽光発電が厄介なのは、その数が極めて多いことである。

原子力などの集中型の発電設備は、通常、重要な施設として、何重にも防護されているので、攻撃は容易には成功しない。

だが、セキュリティレベルの高いところをわざわざ攻撃するよりも、方々にある分散型の太陽光発電を攻撃する方が難易度は低い。守る側としては、防御線が伸び切った状態になるので、守りにくい。

日本は外資の土地取引が規制されていなかったため、太陽光発電名目で数多くの土地が外資に売却された模様であるが、その実態すら把握できていない。そこを拠点としてサイバー攻撃、さらには物理的な攻撃やスパイ活動が行われる危惧がある。

米国では、すでに太陽光発電用のインバーター市場のほとんどは、外国製ないしは外国企業に占められているという。中でも中国のシェアは47%に達する。これには世界最大の太陽光発電用インバーターメーカーであるファーウェイも含まれている。

インバーターは、発電された電力を送電網に送る部品である。したがってそこがサイバー攻撃の対象になると、停電を引き起こしたり、他の発電所を損傷させたりする可能性がある。

これに気づいた米国は、電力網を中国やロシア等のサイバー攻撃から守る体制を整備しつつある。

日本政府も電力網のサイバーセキュリティの強化に着手している。だが今のところは事業者の善意ある協力を前提としている。日本らしい方法だが、本当にこれで間に合うのか心配である。また中国製品の排除には至っていない。

中国産レアアースへの依存

中国中毒に陥っているのは太陽光発電だけではない。

「グリーン投資」には、電気自動車、風力発電などに加えて、省エネルギーを実現するデジタル技術もある。冷暖房のAI制御、乗用車の自動運転技術などだ。

こういった技術に不可欠な素材がレアアースである。

鉄や銅などの大量に使われる金属は「ベースメタル」と呼ばれているが、リチウムやコバルトなど希少な金属を「レアメタル」と呼ぶ。さらにその一部が「レアアース」と呼ばれている。

具体的には、強い磁力をもつ磁石をつくるのに必要なネオジム、コンデンサーやレーザー装置に必要なイットリウムなどである。レアアースは電気自動車用のモーター、風力発電用の発電機、省エネ用の精密機器などに必須で、産業のビタミンと呼ばれる。

じつはレアアースは世界中に存在する。たとえば米国はほぼ自給できるだけの埋蔵量がある。しかし環境規制が厳しく採算が合わないため、採掘されていない。これは他の先進国も同様だ。

代わりに起きていることは、中国による独占的な供給である。いま、世界全体のレアアースの70%以上が中国国内で、ないしは中国企業によってアフリカや中央アジアなどで採掘されている。

そして環境負荷の高い精錬工程に至っては、やはり世界の9割が中国に集中している。

日本、米国、EUのいずれも、現状ではあらゆるハイテク製造業において、レアアースを中国に依存している。中国はサプライチェーンの要を握っているのだ。

この中国依存を先進国は当然問題視している。

だが民主主義国家では、汚染に対する環境規制は厳しくなる一方であり、レアアース調達の中国依存はそう簡単に解決しそうにない。

中国はレアアースを戦略的に使っている。海外ではなく国内企業にレアアースを優先的に割り当てることで、磁石などの工場を海外から国内に事実上強制的に移転させてきた。

のみならず、深刻な人権問題もある。レアアース産業は内モンゴル自治区に集中している。ここでは、モンゴル民族に対するジェノサイドが報じられてきた。しかし、恥ずべきことながら、先進国はこれまでのところ、正面からこの人権問題を取り扱ってこなかった。すでにあまりにも中国にどっぷりと依存し過ぎている為ではなかろうか。

レアアースの中国依存は、軍事的な影響も内包する。

暗視スコープやGPS搭載通信機等、あらゆる現代の軍事装備はハイテク部品の塊であって、レアアースを多く使用している。ということは、レアアース調達が遮断されると、安全保障が脅かされる。

さらに厄介なのは、これらハイテク部品について、すでに中国がかなりの製造能力を有していることだ。今後、それは軍事力強化に直結することを意味する。

今日のハイテク部品は、軍事技術用なのか民生技術用なのかの判断がつきにくく、紙一重である。

たとえば、アップルやサムスンは中国・深圳の工場にスマートフォンの製造を委託し、深圳はスマホ生産の一大拠点となった。だがその後すぐにドローン生産の一大拠点ともなった。ドローンの部品は、スマホの部品と共通点が多い。周知のように、ドローンは現代の戦争において重要な武器である。先進国はスマホの生産を中国に委ねたことで、世界最大のドローン産業を中国に育ててしまったのである。

今後中国でデジタル技術による省エネルギー等のハイテクグリーン産業が隆盛するならば、必ずやそれは軍事転用され、中国のハイテク軍事産業はますます発達する。

先進国の脱炭素政策がそれを助長するのは愚かしいことだ。

独裁国家を利するESG投資

近年、ESG投資ということがよく言われている。環境(E)、社会(S)、企業統治(G)といった、社会的な要請に配慮した投資をすべき、という考え方である。

もちろん、これ自体は悪くない。だが実態としては、バランスを大きく欠いている。

というのは、ESG投資といっても、実態としては判断基準がCO2に偏重しており、しかも単なる火力発電バッシングになってしまっているからだ。

これには大いに問題がある。というのは、いまのESG投資では、端的に言うと、自由主義陣営に属する東南アジアの開発途上国で石炭火力発電事業に投資することが事実上禁止されているからだ。その一方で、これらの国々が中国製の太陽光発電や電気自動車を購入することが奨励されている。

人権抑圧が事件になると、ごく限定的に、関係者との商取引が問題視されることは、これまでのESG投資の枠組みの中でもあった。

だが、そもそも人権抑圧をする国家と商取引をしてよいのか、ということについては、ESG投資はお構いなしだった。むしろESG投資は、中国依存を強める原動力として作用してきた。

残念ながら、現状のESG投資は、石炭を憎む一方で、独裁国家を支援している。

けれども、そもそもESGSとは、よき社会の意味である。今後、政府と金融機関は、ESG投資を見直し、CO2偏重を止め、人権問題と安全保障を重視して、脱中国依存を新たな潮流にすべきである。

CO2と中国、どっちが脅威か?

CO2濃度は江戸時代の0.028%に比べて1.5倍の0.042%に近づいた。この間、地球の平均気温は約1℃上昇した。

だが俗説と異なり、「災害の激甚化」は起きていない。

たとえば、上陸時に930ヘクトパスカル以下の中心気圧を保っているような、伊勢湾台風のように本当に強い台風はここ数十年、むしろ日本に来なくなった。

観測史上最も強かった台風は、第一・第二室戸台風、枕崎台風、伊勢湾台風であるが、全て1961年以前である。

観測・統計データを見ると、「台風が地球温暖化で激甚化している」という俗説は誤りと分かる。

将来については、激甚化の予測はあるが、これはシミュレーションによるもので、その信頼性については大いに議論の余地がある。

他方で、「再エネ最優先」で2030年・2050年に向かって極端な脱炭素を進めると、どうなるか。化石燃料の使用を止めれば、中国の鉱物資源と製造業への依存が高まる。中国経済は強く、日本経済は弱くなり、畢竟、自由、民主といった日本の基本的な価値が脅かされる。

中国とCO2と、どちらが日本にとって真に差し迫った脅威か。熟慮が必要だ。

中国依存の脱炭素は愚かだ