レポート  外交・安全保障  2019.12.19

第30回CIGS政策シミュレーション「インド太平洋は新しい戦略空間になるか?」概要報告

1.概要

 

 2019年3月9日(土)~10日(日)、当研究所は第30回CIGS政策シミュレーション「インド太平洋は新しい戦略空間になるか?」を開催した。

 「インド太平洋」という地域概念は、2012年頃からオーストラリアやインドネシア等の政府文書等によって議論されていたが、安倍首相のアフリカ開発会議(TICAD)での演説(2016年8月)、及びトランプ大統領のベトナム・ダナンでの政策演説(2017年11月)が共に「自由で開かれたインド太平洋戦略」を提唱したことをきっかけとして、政策概念として広く普及するようになった。

 アジア太平洋(1980年代〜)、東アジア(1990年代〜)、拡大東アジア(2000年代〜)といった地域概念のように、「インド太平洋」は21世紀初頭の中核的地域概念として台頭するのだろうか。日本政府のいう「2つの大陸」(アジアとユーラシア)、「2つの海」(太平洋とインド洋)をつなぐ広大な概念が、政治・経済・安全保障において意味ある地域のまとまりとして定着するかは、依然として不確定である。米国・日本・豪州・インド・ASEANのインド太平洋構想の定義、意義、地理的範囲、政策上の優先順位には、共通性と差異の双方を見いだすことができる。

 そこで今回のシミュレーションではインド太平洋地域で生じる、政治変動・経済問題・安全保障上の問題に、地域の主要アクターがいかなる政策対応をし、どのような協力と対立の構図が形成されるかを中心的課題とした。仮に主要アクターの問題意識が収斂し、政策協調が進むようであれば、インド太平洋は戦略空間としての意義付けを獲得したといえるかもしれない。逆に、主要アクターの関心が凝集されず、協力が進まないばかりか、対立の構図が生まれるということであれば、政策概念としてのインド太平洋の将来は覚束ない。


 本シミュレーションには、現役官僚、研究者、企業関係者、ジャーナリストなど約40名が参加し、2日間の演習を通じて多くの教訓と課題が抽出された。・・・

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第30回CIGS政策シミュレーション「インド太平洋は新しい戦略空間になるか?」概要報告