論文  国際交流  2019.02.27

金融システムの安定と対外市場開放のバランス

『ITI調査研究シリーズ No.81』 2019年2月号(一般財団法人 国際貿易投資研究所(ITI))に掲載

一般財団法人・国際貿易投資研究所(ITI)の平成30年度中国研究会「中国の新時代の新矛盾に対処する国内外における経済・社会統治のあり方」に参加し、報告書の一部「第6章 金融システムの安定と対外市場開放のバランス」を執筆しました。


要旨

 「中国の新時代の新矛盾への対処」という視点から、金融制度改革における政府及び主要金融機関の取組み姿勢をみると、経済・社会の安定を重視するあまり、市場化に向けた改革にやや時間がかかりすぎ、改革開放の果実を十分に受け取れていないように感じられることがある。

 中国は経済制度改革全般を漸進的に進める中で、金融制度改革も相応の時間をかけて進めてきた。それでも、WTO加盟直後の銀行制度改革にみられるように、危機感を伴う重要局面においては、思い切った集中的な改革を遂行し、経済成長に必要な資金を潤沢に供給してきた。ただし、最近は改革のペースがかなり鈍化しているように窺われる。2009年以降に急拡大した企業及び地方政府の債務を持続可能な水準まで調整する過程において、既存の金融機関は成長資金の供給に慎重になっているケースが多い。また、インターネットを活用した新たな金融サービスは、ルール整備が追いついていないなどの事情のために、金融当局によってやや抑制された状況となっている。

 2018年4月、習近平国家主席は金融業について更なる対外市場開放を推進すると宣言した。これを受け、外国の証券会社や生命保険会社などが出資比率の引上げや新規参入のプロセスをスタートさせている。ただし、「安定」を重視する中国政府は、金融の自由化については依然として慎重なスタンスを維持している。中国が対外開放の成果を長期的視野から有効に確保するためには、外資金融機関がルールの下で自由に活動できる環境を整備することが重要であろう。


詳しくは、ITI調査研究シリーズNo.81をご覧ください。(外部のサイトに移動します)