論文  財政・社会保障制度  2016.09.09

財政再建への道のり-どん底からどのように抜け出したのか<兵庫県香美町:過疎債と地総債の負担からの脱却>

『地方財務』(株式会社ぎょうせい)2016年8月号に掲載

はじめに

 第14回は兵庫県香美町を取り上げる。香美町は平成17年4月に、旧香住町と旧村岡町、旧美方町の合併により誕生した、兵庫県内で最も広い面積を持つ町である。縦に並んだ3つの町が合併した香美町は、海と山、川、温泉を有している。海側の香住区は、日本海に面しているため、水産業が盛んであり、山陰海岸国立公園に指定され、冬は松葉蟹、夏は海水浴を目的とした観光客でにぎわっている。一方、山側にある村岡区と小代区では、氷ノ山後山那岐山国定公園や但馬山岳県立自然公園などの自然公園区域が6割も占めており、豪雪地帯に指定され、ハチ北スキー場やおじろスキー場がある。このように自然に恵まれた風光明媚な香美町であるが、平成20年から平成27年の7年間、兵庫県内で高齢化率が最も高かった過疎地域である。

 香美町は平成19年1月に「香美町行財政改革大綱」を策定し、財政再建に取り組んでいたが、平成20年度決算における実質公債費比率が26.6%と、早期健全化基準である25%を上回り、平成21年度に財政健全化団体となった。その要因は、平成13年頃までに集中して行ってきた、ごみ処理施設や中学校などの社会資本整備事業と、公立香住病院と公立八鹿病院の改築事業のほか、公立香住病院事業企業会計、簡易水道事業特別会計、下水道事業特別会計などへの繰出金や一部事務組合への負担金が挙げられる。

 香美町を概観するには、合併を理解する必要がある。旧村岡町と旧美方町では過疎対策事業債(以下、過疎債と略す)が活用できたため、産業を興し、雇用を作るのが行政の仕事と自負し、町道改良事業や林道改良事業、観光・レクリエーション施設事業など、さまざまな事業を行ってきた。一方、旧香住町は過疎指定地域ではなかったため、平成8年度以前の地域総合整備事業債(以下、地総債と略す)を活用し、海の文化館や福祉村(特別養護老人ホーム、デイサービス施設)などを建設してきたという違いがある。

 旧3町をあわせた地方債残高は、平成15年度に504億8000万円とピークを迎え、その後、残高は減少していくが、実質公債費比率は平成18年度決算が29.4%、平成19年度決算が27.6%と一気に下がることはなく、平成20年度決算に26.6%となり、平成21年度に財政健全化団体となった。そこで、本稿では、香美町の財政再建の取り組みについて検討する。・・・


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兵庫県香美町:過疎債と地総債の負担からの脱却