中国当局が台湾住民に対し、中国の身分証の申請取得を促す動きを強めている。12月3日、国務院台湾事務弁公室の定例記者会見で、張晗報道官は、台湾の人々が自発的に中国の身分証を申請することは「合法的な権利である」と強調した。会見では、大型のモニターを使いながら、台湾人が中国の「居住証」、「定住証」、さらには「中華人民共和国居民身分証」(中国の国民が保有する「身分証」)を申請取得する際の条件や手続きについて詳しい説明が行われた。
「居住証」は、「香港・マカオ・台湾住民の居住証の申請および発給に関する規定(港澳台居民居住証申領発放弁法)」に基づいて、台湾出身者が中国に半年以上居住して、合法的な就職先、住所、あるいは在学のいずれか一つを満たしていれば、本人の意思で申請できるという。「定住証」については、中国での定住が認められた台湾住民が、定住地の戸籍登録機関で住民登録を行う際に用いる証明書であると説明。2024年1月1日からは台湾住民の福建省への定住や戸籍登録を促進する政策を奨励し、「希望者は全員受け入れる(願落盡落)」方針を掲げていると述べた。さらに「身分証」については、「中華人民共和国身分証法」関連規定に基づき、台湾住民であっても中国に定住する以上、戸籍登録時に「身分証」も申請するべきだと言及した。
これに対して、メディアからは、「こうした説明は、両岸政策の変化を意味するのか」「台湾の人々が中国で『二重戸籍』を持つことを認めることになるのか」「定住証や身分証を申請することは、『台湾身分』を放棄することを意味するのか」といった質問が上がった。これに対し張報道官は、今後も台湾の人々が中国で生活して、発展していくために、より便利な環境を整えて、協力を強化していくとした上で、身分証申請に関わる個人情報の安全も守ると述べた。そして、「台湾は中国の一部であり、世界には一つの中国しかない」と、従来の立場を改めて示した。
一方、台湾側では大陸委員会(陸委会)が同日、声明を発表。両岸間の身分管理は単一制度によって30年以上運用されており、両岸の人々の往来と交流秩序を支える重要な基盤となっている。中国共産党が近年、統一戦線工作の一環として台湾住民に対し「定住証」や「身分証」を乱発していることは、台湾側の法的秩序を脅かすものであり、政府として看過することはできないと強調した。
翌4日、台湾の大陸委員会の梁文傑・副主任委員兼報道官が記者会見に臨み、中国による身分証発給拡大の問題について答えた。それによると、軍人・公務員・教職員については既に身分状況の全面調査を実施済みであり、今後は新規採用や異動の際に確認するのみで再度の一斉調査を行う予定はない。他方、一般市民については、近年、関連の告発件数が増えていると指摘し、中国側の身分を実際に取得している事例が確認された場合には、法令に基づき適切に対処すると述べた。