コラム  国際交流  2024.04.15

米中対立は表面上若干鎮静化しているが、実質は不変

~トランプ前大統領当選に対する懸念は深刻~

<2024年2月26日~3月14日 米国欧州出張報告>

国際政治・外交

<主なポイント>

  • 中国経済の減速がすでに既成事実として共通認識になっている一方、中国経済が近い将来に失速することを懸念する見方が少なくなっているように感じられた。中国経済の先行きについては、中長期的展望の不透明性に対する懸念が中心だった。
  • 大統領選挙キャンペーンが本格化すれば、選挙にマイナスとなる対中融和政策は選択肢となり得ないうえ、選挙後も米中関係が改善に向かう可能性は殆どないというのが専門家、有識者の一致した見方。ただし、本年入り後、若干ながら米中対立に鎮静化の兆しが見られているとの見方が出てきている。
  • 昨年11月の首脳会談実施後、米中両国間で国務省、財務省、商務省、国防総省とも政府高官等のハイレベル対話を継続。これにより、米中両国間の武力衝突リスクが若干軽減されたとの見方がある。しかし、中国はいざという時に対話を拒絶することが多いため、現在の対話ルートがどこまで機能するかは不透明であるとの指摘もある。
  • 大統領選挙キャンペーンでは米国の内政問題が主要論争テーマとなっているため、中国問題に対する関心が低下しており、それが米中対立が若干鎮静化したような印象を与えている。しかし、実際には米中関係の実質的な改善は殆ど見られていない。
  • 米国の中国専門家によれば、台湾総統選において頼清徳氏が勝利した後、中国政府は台湾に対する強硬発言を抑制しているほか、中国軍用機の台湾周辺空域への進入回数も減少しているなど、台湾に関する外交・安保姿勢の変化が見られている。これは5月に予定されている頼清徳の大統領就任演説の前に台湾側を刺激しないようにすることが目的であると見られている。米国側もこれに呼応するように、米国政府高官が訪台する際に目立たないように配慮している由。
  • 米国大統領選は、民主党のバイデン大統領と共和党のトランプ前大統領の間で争われることが確実となっている。現時点では両候補が勝利する可能性はほぼ五分五分と見られており、予測が立たない状況にある。
  • バイデン大統領が勝利して続投する場合には、対中政策を含めて現在の第1期目と次期の政策の間に大きな変化は生じないとの見方でほぼ一致している。
  • トランプ氏が勝利する場合、閣僚はトランプ氏に忠誠を誓う人々のみで構成されるため、経験が乏しく専門的な知見を欠く人々が要職に就任する可能性が高いことから、国内外の信頼を失うような政策運営が実施されることが強く懸念されている。
  • 米国、欧州の両方において、これまでの移民政策、環境政策等のリベラルな左寄りの政策に対する不満が強まり、政策方針を右寄りに見直す動きが広がっている。

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米中対立は表面上若干鎮静化しているが、実質は不変