コラム  エネルギー・環境  2017.02.15

エネルギー・地球温暖化分野でのイノベーション加速の重要性

 先月、米国トランプ大統領が就任し、キャンペーン中の公約に基づき、矢継ぎ早に大統領令を発出し、各分野で大きな議論が起こっている。大統領令発出には至っていない(2月7日現在)ものの、国際的な注目を呼ぶものの一つは、地球温暖化対策・エネルギー政策であり、特に「パリ協定」の離脱をはじめとするエネルギー・地球温暖化政策の見直しである。まず、「パリ協定」や同協定後のグローバルなエネルギー・地球温暖化対策分野の大きな動向についてふり返ってみたい。

 「パリ協定」は、気候変動枠組条約(UNFCCC)第21回締約国大会(COP21)で合意され、昨年11月4日に発効した。2020年以後の国際的な温室効果ガス削減の枠組である同協定では、長期目標として、地球の平均気温上昇を今世紀末まで2℃より十分下方に保持し、また1.5℃に抑える努力を追求すると明記されている。この実現のため、各国は自主的な目標を掲げ削減策を実施することが求められている。

 「パリ協定」は、地球温暖化をめぐる世界の関心が、国際的な制度設計から、実効ある政策を如何に効果的に立案実施するのかといった「実践」への移行を象徴するものである。日本においても同様に、福島第一原子力発電所事故後のエネルギーをめぐる様々な議論を経て、エネルギー及び地球温暖化政策の枠組みと方向性に関する議論から将来のエネルギーミックスを見据えた政策の実施の段階に移っている。

 UNFCCC事務局などの多くの分析がすでに示したように、世界の気温上昇を2℃以下に抑えるための温暖化ガス排出の軌道と各国の自主目標を積み上げた合計との間には、大きなギャップが存在する。これを埋めるには、イノベーションが必要不可欠であることは論を待たない。現下のエネルギー価格を踏まえて、エネルギー・地球温暖化対策分野にどのようにイノベーションを起こしていくかは重要課題である。とりわけ日本においては、財政の制約が大きく、同時に経済成長が先進国の中でも低位にとどまっているなど厳しい状況にあり、効果的なイノベーションの加速が求められている所以である。斬新で柔軟でかつ長期的視点に基づく発想と大胆な行動が求められているのである。

 加えて、エネルギー・地球温暖化をめぐる上記のような日本の状況に鑑みれば、今一度可能な限り客観的・正確に現状や将来展望、あるいは相互のギャップなどについてのリスク評価が必要である。原子力の利用、再生可能エネルギーの拡大、省エネルギーによるエネルギー需要の抑制、国際協力の進捗等、さまざまな側面において、将来直面する現実と計画や見通しとの乖離が想像以上に大きい可能性が否定できないからであり、その影響が予想を超えて大きいこともありうるからである。この種の評価をできるだけ中立的・客観的に行う意義は、特にエネルギー・地球温暖化分野では大きいものと思われる。

 今後、トランプ政権の政策発表により、世界の地球温暖化対策をめぐる情勢が大きく変化する可能性はなしとしないが、現状と将来展望につきできるだけ客観的にリスク等を評価しつつ、グローバルな視野からエネルギー・地球温暖化分野でイノベーションを加速していく重要性は変わらない。当研究所のエネルギー環境チームは、変動する国際情勢をも踏まえながら、上述したイノベーションとリスク評価を中心に、エネルギー政策と地球温暖化対策の横断的研究を展開していくこととしている。